暗がりの中にぼんやりと薄墨のシルエット
青鷺だった
抜き足 差し足、一歩ずつ優雅に、完璧なバランスで静止する
間を推しはかっているかのように見えるのだが、否、まるで私たちなどいないかの如く知らん顔をしている。
時に白く長い頸を伸ばし、スポットライトによってくっきりと暗闇に浮かび上がり、線対称の記号が水面に描かれてゆく。
私たちはと言えばーー湯船からその神秘的な光景に固唾をのむのだが、鏡に写った自分の姿をを見つめているのかと思いきや、次の瞬間嘴を泥に刺し水底の馳走を捉えるのだ。
そう、彼には反射する幻の向こうが見えているのだ。
そして多くの鳥は暗くなると群れるけれど、周りに仲間はいないようだ。いつもすらりと水田や川岸に佇んでいる。
泊まった宿は水田の中にあり、部屋の前には水鏡のために水を貼っただけの田が巡らされ、空と月山が映っていた。
稲とは特別な植物だ。この昼には空をー夜には星を写す水鏡の中で、清らかな水と深い泥の中で育つ。
夕方散歩した小さな川の水面には鳥海山。
羽黒山の山頂には河骨の黄色い花が咲く。
6月の終わりにreflectionとdepthのキーワード、そして青鷺のメディスンを私は受け取った。